老人介護のエピソード

 

(27) 院内で癒着により一部の人間が利益を得ている体質が…

 転院してから改めて診断があり、親父の病名が増えた。大体お年寄りに病院がつける病名はおよそ決まった相場のようなものがある。というより、殆どの老人に共通する病気は多いと言った方が正解かも知れない。が、それがまた商売のネタでもあるのは諸兄がご存じの通り。

 親父の場合は7つもある。別に前の病院が見落としていたわけではなく、説明も聞いていたから驚もしない。病名をつけるか、つけないかは主治医の勝手である。脳梗塞の後遺症による半身麻痺、除脈や不整脈は当然含まれているし、胸水が溜まっているという新しい所見も加えられた。いつも誤飲の傾向があり食事中に咳き込むことが多いから、診察して X-ray 写真を見なくてもその可能性は十分にうなづける。とにかく、膨大な資料をいろいろ書かされ、最終的に誓約書にサインをさせられた。

 しかし、病院の裏ではいろんな事情が交錯しているのである。私のように2日に一度行って、介護の手伝い(ボランティア)をしていれば、かなり詳しくその内容を知ることができる。わざわざ食事の時間に行って介護士の代わりに食事の介護をしたり、髭を剃ってやったり、何年も同じようなことをしているから、介護士のする仕事の内容さえも心得ている。食事が終わったら口腔ケアをしたり、所定の位置にベッドの傾斜やテーブルを戻し、体位の変更や蓐瘡(じょくそう:簡単に言えば寝だダコ)防止用の枕の位置を変えたりと、彼らがする作業の一部を殆どやって洗濯物を交換して帰る。

余った紙パンツも簡単には使ってもらえない
余った紙パンツも簡単には使ってもらえない

 自宅で沢山余っていたオムツも勿体ないのでこれを使ってもらおうとすると、指定のものでないと業者が引き取らないことになっており、自分で持ち帰らなければならい。それを入れておく容器も自己負担で購入して持参しろというのが病院側の依頼。それが院内で癒着により一部の人間が利益を得ている体質があることを意味している。もちろん、施設や病院で取扱いが異なる。例えば、紙パンツもベッドで介護するには、オムツ形式の方が使いやすいということは、介護をしたことのある人にはよくお解りであろう。当然組織内のある部門からの指導であることは明らかで、看護士や介護士はとても申し訳なさそうに私に謝る。そんなことは百も承知のことであり、快諾する。

 私のように下着や病衣を自分で洗濯するのは、病院にとって嬉しくない家族である。病院の業者からのピンハネ分が減ってしまうからだ。ただ、私の場合は彼らのお手伝いをしているので、看護士や介護士からはそれほど嫌がられていないだけで、病院の管理部門からは嫌な存在である。頻繁に訪問する私と目が合った全ての介護士や看護師は、いつも心からの感謝の言葉をかけられた。そうかも知れない、彼らはすべての患者さんの食事の世話をしてから、遅い昼食を取らざるを得ない。私が院内の食堂で遅い昼食を摂っていると、顔馴染み看護士や介護士によく出会った。私の親父の髭剃りや食事も私がしなければ、彼らがしなければならないし、して当然で給料・手当が増えるわけでもないから、なければその分楽になることを意味する。

 

相変わらず2日に一度訪問、リハビリは名ばかり…

 

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