老人介護のエピソード

 

(26) 大変恐縮ですが、年金など収入はどれ位ありますか?

 転院に関する事前のヒアリングの際、最初に尋ねられたのは身元保証人に関する件と親父の年金である。

地獄の沙汰も金次第と言うが…、似たようなことは現世からあるもの。事務部門の担当者からそれとなく空きベッドが少ないという雰囲気の話を聞いた。実は、転院を考えている家族に少しでもお金を出させる作戦のようなもので、人生も長くなると、世の中の裏表がよく見えるようになるものである。どこの病院でもよく使う手口だが、患者側に受け入れてあげるという恩義を着せて、逆に病院側の意見を飲み込ませようようとする作戦の一つだ。すべての病院がそうであるとは言えないが、各都道府県毎に似たような手口が見られる。一応彼らの説明を黙って素直に聞いた。

 

 そして、最後に出てきたのがダメ押しのひと口で、「大変恐縮ですが、お父様の年金など収入はどれ位ありますか?」という質問である。正直に答えて、親父の年金も決して多くはないが世間並みで、軍人恩給の80万円/年を加えると年に400万円を超え、確定申告が必要である(いまは年収が400万円以下なら不要という税務署も多い。)ことも説明した。それに私が実子で身元保証人であり、現役で収入もあることからそれをアテにしている人は誰も居ないことを付け加えた。

 

 それを聞いて担当者の態度がガラリと一変するほど変わった。それなら是非当院にという雰囲気にさえ感ずる。先の病院の袖の下の話に類するお金に汚い病院は何処の病院でも、経営上はそれが一番心配であることはよく理解できる。先ほどのぐだぐだとした説明は何だったんだと言いたくなる。

 そのような一部の管理部門の公にならない不正行為と思われる話は、後にも出てくるが、業者と癒着して甘い蜜を吸おうとする一部の医師や管理職がどこにも必ず居る。現代の老人介護社会においては、少ない人数の介護職に十分な休息(休暇)を与えず安い賃金で働かせ、一方で誰が見ても不自然なおやつ代などと称して余分な費用を徴収したり、名前ばかりのリハビリでその費用を請求する手口が共通した組織は実に多い。 その主たる根源は政府の施策の遅れにあるのだが、予測はできていても急速に進む高齢化に対し、行政は常に後追い政策のものであるから仕方のない面もある。

 親父の最期を看取って頂いたこの病院に移って間もない頃、かの東北大震災が起きた。私もプラント・エンジニアの端くれだから、原子力発電所の事故に関しても基本的なことは多少判る。が、内閣府や担当省庁は、何も肝心なことが手早くできず、被害を拡大させている。被災者の救済や復興に関しても同じで、船頭が多過ぎるのか、素人が多過ぎるのか、遅々として進まない。地震大国の日本がこんなことでは、今後の繰り返される災害対策の見通しは暗い。

 そんな中にありながら、看護士長をはじめ、各看護士、介護士、清掃員はとても(金銭的にも)清潔で親切、礼儀正しく、院内の医師よりもしっかりしているのには驚いた。いや、医師の中にも尊敬すべき方は多くおられ、感謝もできたが、看護士にはいろいろ適切な融通や機転も効かせて頂き有り難かった。

 

院内で癒着により一部の人間が利益を得ている体質が…

 

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