2. 出汁(だし)を考える

        かつお節 ・ 昆 布 ・ シイタケ
        かつお節 ・ 昆 布 ・ シイタケ

  前稿の「さしすせそ」は単なる味付けの方法である。

が、「出汁」を入れないで調理 をするほど無謀なものはない。余程のことがない限り、必ず使うのが出汁である。鍋物をつくる時に、昆布や海藻、海老、蟹、魚、肉の類を必ずいずれか又は複数組み合わせて使う。そうでない一般料理には、我が国伝統の味である「かつお」「煮干し」「昆布」あるいは「鶏ガラスープ」、「チキンブイヨン」といった出汁を使う。   

 出汁の代表的なものは魚類の「イノシン酸ナトリム」と昆布の「グルタミン酸ソーダ」であるが、この他にトマトやシイタケもある。これらを合わせて使うと複合的な深みのある味になる。食べ分けることのできる方は、自分で試してみるといい。西洋人は約300種類の味覚を食べ分けるのに比べ、日本人は700~800種類を食べ分けると言われており、味音痴の方は前者の人種かも知れない。

日本の完熟トマトが「出汁」として使える理由は、野菜の中で最も「グルタミン酸」が多いからである。(参考資料

 概ねグルタミン酸は植物性、イノシン酸は動物性と覚えておけばいいが、ご覧のように例外もある。イノシン酸は植物には殆どなく、赤身魚に多く、白身魚には少ない。

スルメイカも以外にグルタミン酸系の出汁成分を持ち、案外出汁が出るのでよく使われているが赤身魚ほど濃くはない。

シイタケが「出汁」になる理由は、グルタミン酸も含まれるが、「グアニル酸」という特有の旨み成分が含まれるからである。

グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸は日本を代表する旨み成分である。但し、いずれも「酸」がつくように、グルタミン酸そのものは強い酸味を呈する。だから一般的にこれらにソーダ(ナトリウム)を付けて製品に仕上げている。従い、多量の摂取が良くないという理由もすでにお分かりだろう。そう、NaCl(塩化ナトリウム=塩)分のとり過ぎと同じ結果になるからだ。

 その昔現代のように、手軽に使える顆粒や粉末の出汁がない頃には、「味の素」(グルタミン酸ソーダ)を使って味を良くすることが考えられた。これは小麦粉やなどのグルテン(強力粉に多く含まれる)を加水分解して作って製造していたが、資源の少ないわが国では原料費が高くつき、石油由来成分(アクリロニトリルなど)による合成などが試みられた。なんだか石油由来と聞いたただけで「がん」になりそうであるが、商品の「味の素」は外国(確かアメリカかカナダだったと記憶する。)では、発がん性があるということで使用禁止にしているものの、わが国では未だ黙認のままになっている。事件後、現在の製法はすでに変わっている。(最新ニュース

その後、協和発酵工業(現・協和発酵キリン)によりグルタミン酸生産菌が発見され、糖蜜廃液(廃液と言っても、サトウキビ搾取カスで飼料や肥料になるもの)を使い発酵させて作られることになった。もちろん、これらにも菌の活性化や発泡性改善のための化学的添加剤が加えられる。さらに、できたものはグルタミン酸なのでこれをグルタミン酸ソーダ(ナトリウム)にするために、水酸化ナトリムを加えて仕上げる。つまり、食品添加物はこの頃から盛んに使われていた。頭痛、歯痛、顔面の紅潮、体の痺れなどの症状を訴えた中華料理店症候群(1968年頃)は、実はグルタミン酸ソーダが諸悪の根源であった。話のついでに「サッカリン」など危険な食品添加物である甘味料は戦後随分使われたものだ。highdy も子供の頃その錠剤を舐(な)めた記憶がある。いまは知識が邪魔をしてそんな勇気はない。

というわけで、次回は食品添加物について…。

 

[Back]          [Next]

 

食べ物のお話シーズ Top